ファクタリングの仕訳例を徹底解説
ファクタリングは、企業が保有する売掛金を第三者に売却し、即時に資金を調達する手法です。この仕組みは、特に中小企業にとって資金繰りを円滑にする手段として広く利用されています。しかし、ファクタリングを行う際には、しっかりとした会計処理が求められます。この記事では、ファクタリングにおける具体的な仕訳例を紹介し、実務での活用法を解説していきます。
ファクタリングの基本的な流れと会計処理
ファクタリングを利用する際の基本的な流れは、売掛金の譲渡から現金の受け取りまでの一連のプロセスを含みます。ここでは、ファクタリング契約の流れと、それに伴う会計処理の基本概念を説明します。
ファクタリング契約の流れ
ファクタリング契約は、以下のような流れで進行します。
- 契約締結:ファクタリング会社との契約を結びます。この際、譲渡する売掛金の額や手数料についても合意します。
- 売掛金の譲渡:契約が締結されると、売掛金がファクタリング会社に譲渡されます。
- 現金の受け取り:ファクタリング会社から、譲渡した売掛金の一部(通常80%程度)が現金として支払われます。
- 債権の回収:ファクタリング会社が売掛金の回収を行います。
- 残金の支払い:売掛金が回収された後、残りの金額から手数料を引いた額が企業に支払われます。
仕訳の基本概念
ファクタリングにおける仕訳は、主に「売掛金の譲渡」と「現金受取」の2つの流れから成り立っています。売掛金を譲渡した時点で、売掛金が減少し、通常は「未収入金」として計上します。現金の入金時に「未収入金」を減らし、「普通預金」が増加する形で仕訳が行われます。
ファクタリングの具体的な仕訳例
実際のファクタリング取引における仕訳を段階別に見ていきましょう。ここでは、100万円の売掛金をファクタリングする例を使って説明します。
1. 売掛金発生時の仕訳
借方 貸方 売掛金 1,000,000円 売上 1,000,000円
これは通常の売掛金発生の仕訳です。
2. ファクタリング契約締結時の仕訳
借方 貸方 未収入金 1,000,000円 売掛金 1,000,000円
売掛金を未収入金に振り替えます。この時点ではまだ現金は受け取っていません。
3. ファクタリング会社からの入金時の仕訳(手数料5%の場合)
借方 貸方 普通預金 950,000円 未収入金 1,000,000円 売上債権売却損 50,000円
手数料は「売上債権売却損」として処理します。企業によっては「支払手数料」や「ファクタリング手数料」として営業外費用に計上する場合もあります。
保証型ファクタリングの仕訳例
保証型ファクタリングは、売掛金の回収リスクをファクタリング会社が保証するタイプです。この場合の仕訳は以下のようになります。
保証料支払い時の仕訳
借方 貸方 支払手数料 20,000円 現金預金 20,000円
売掛金が回収不能となった場合の仕訳
借方 貸方 貸倒損失 1,000,000円 売掛金 1,000,000円
保証金受領時の仕訳
借方 貸方 普通預金 1,000,000円 雑収入 1,000,000円
保証型ファクタリングでは、売掛金回収時は通常通り処理し、手数料を「支払手数料」として処理します。回収不能時は「貸倒損失」を計上し、保証金受領は「雑収入」として計上します。
ファクタリングにおける注意点とリスク
ファクタリングは資金調達の手段として非常に便利ですが、注意すべき点やリスクも存在します。ここでは、ファクタリングを利用する際に気をつけるべきポイントや、潜在的なリスクについて詳しく解説します。
契約内容の確認
ファクタリング契約を締結する前に、契約内容をしっかりと確認することは非常に重要です。特に注意すべきポイントは以下の通りです。
- 手数料の詳細:ファクタリング手数料がどのように計算されるのか、また、その額が市場相場と比較して妥当かどうかを確認しましょう。
- 譲渡する売掛金の範囲:譲渡する売掛金がどのような条件で選定されるのか、特定の取引先の売掛金のみなのか、全体の売掛金が対象なのかを明確に把握することが大切です。
- 契約形態の確認:買取型か保証型かによって、仕訳処理や会計上の扱いが異なるため、契約形態を正確に理解しておく必要があります。
手数料やリスクについて
ファクタリングを利用する際には、手数料やその他のリスクについても考慮する必要があります。以下のようなリスクを理解しておきましょう。
- 高い手数料:ファクタリングの手数料は、通常の金融機関の融資に比べて高く設定されることが多いです。そのため、手数料が収益を圧迫する可能性があります。
- 債権の回収リスク:特に保証型では回収不能リスクがあり、買取型でもリコース(遡求権)がある場合は、売掛金が回収されなかった際に企業に請求される可能性があります。
- 信用リスク:取引先の信用状況によっては、ファクタリングの利用が難しくなることがあります。特に新規取引先の場合、信用調査が必要です。
適切な勘定科目の選択方法
ファクタリングに伴う仕訳を行う際には、適切な勘定科目の選択が求められます。ここでは、勘定科目の選び方や業種別の使い分けについて詳しく解説します。
勘定科目の選び方
ファクタリングに関連する主な勘定科目と、その内容・用途は以下の通りです。
- 売掛金:取引先への未回収代金を資産として計上します。ファクタリングにより譲渡される対象となります。
- 未収入金:売掛金譲渡によりファクタリング会社に対する債権として計上します。実務では最も一般的に使用される勘定科目です。
- 売上債権売却損:ファクタリング手数料など、売掛金売却に伴う損失を計上します。営業外費用として処理されることが一般的です。
- 支払手数料:保証型ファクタリングの保証料等を計上する際に使用します。
- 貸倒損失:回収不能となった売掛金の損失を計上します。
- 雑収入:保証型での保証金受け取り時に使用します。
- 普通預金・現金:ファクタリング会社からの入金金額を計上します。
業種別の勘定科目の使い分け
業種や契約形態によって多少の使い分けがありますが、基本的な仕訳パターンは共通しています。
- 製造業:製造業では、売掛金の他に「受取手形」なども含めてファクタリングの対象とする場合があります。手数料は製造原価には含めず、営業外費用として処理します。
- サービス業:サービス業では、売掛金が発生しやすいため、ファクタリングによる資金調達が効果的です。「売上債権売却損」として手数料を計上するのが一般的です。
- 小売業:小売業では、現金取引が多いため売掛金は比較的少ないですが、法人向け取引では売掛金が発生します。この場合も、標準的な仕訳処理を適用します。
適切な勘定科目を選択し、正確な仕訳を行うことで、企業の財務状況を正確に把握することができます。実務では会計基準や税務指導を参考に使い分けることが重要です。
まとめと実践的アドバイス
ファクタリングは、企業の資金繰りを助ける非常に有効な手段ですが、注意点やリスクも伴います。正しい仕訳を行うことで、企業の財務状況を正確に反映させることができ、適切な対策を講じることが可能になります。
ここでの重要なポイントを再確認してみましょう。
- 正確な仕訳処理:売掛金発生→未収入金への振替→入金時の未収入金消込と損失計上という基本的な流れを理解し、適切に処理することが重要です。
- 契約内容の詳細確認:買取型か保証型か、手数料率はいくらか、譲渡条件はどうなっているかなど、契約内容をしっかりと確認しましょう。
- 適切な勘定科目の選択:「未収入金」「売上債権売却損」など、実務で一般的に使用される勘定科目を適切に選択することが大切です。
- リスクの理解と対策:高い手数料負担や債権回収リスクなど、ファクタリングに伴うリスクを理解し、事前に対策を講じることが必要です。
最後に、ファクタリングを利用する際には、信頼できるファクタリング会社を選択することが重要です。契約内容や手数料について明確な説明を受け、納得のいく形で契約を結ぶことが大切です。また、実際の仕訳では契約内容や企業の会計方針によって細部が異なるため、必要に応じて税理士や会計士などの専門家に相談することをお勧めします。
今後のファクタリング市場の動向についても注視し、企業にとって最適な資金調達手段を選ぶことが成功のカギとなります。しっかりとした知識を持って、ファクタリングを効果的に利用していきましょう。
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監修者・編集者 安藤 雄二(あんどう ゆうじ)
消費者金融・資金調達の専門家
22歳から某金融関係の事業に携わり、借金の相談、債務整理、ギャンブル依存症の相談、カードローンやビジネスローン、ファクタリングを利用する際のアドバイス、オンラインでの人生相談、株式会社国際物流研究所代表取締役、高知の総合こうちっち代表、WEB制作エターナルクリエイト代表と様々な事業を行っている。安全安心の金融会社をお探しの方はこちらのメールで気楽にご連絡ください。 |