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勤務先に「◯◯さんはいらっしゃいますか」という電話がかかってきて、聞いてみると在籍確認だった。その場で答えてよいものか迷うところです。
発信元を確認できない段階では、在籍の有無を答えないでください。「個人情報に関わるため、その場ではお答えできません。担当部署に確認します」と伝えれば足ります。
電話が来たらまず何と言うか
電話口で迷ったときは、次のどれかで対応できます。
- 相手が誰か分からないとき:「恐れ入りますが、御社名とご担当者名、ご用件をお伺いできますか」
- その場で答えたくないとき:「個人情報に関わるため、その場ではお答えできません。担当部署に確認のうえ、こちらから折り返します」
- 本人が不在のとき:「在席状況を含め、お答えいたしかねます。ご用件をお預かりします」
- 相手を確認できないとき:「確認が取れないお問い合わせにはお答えできません。失礼いたします」
折り返すと伝えて切って差し支えありません。相手が正規の事業者なら、改めて連絡が取れます。
切る前に、次の項目を控えておきます。あとで確認するときにも、社内で申し送るときにも要ります。
- 受けた日時
- 相手の社名・担当者名
- 貸金業者を名乗った場合は登録番号
- 着信に表示された番号と、相手が伝えてきた折り返し先
- 用件と、聞かれた内容
- 自社の対応者と、答えた範囲
必要に応じて本人へ確認する場合も、周囲に用件が分からない方法で行います。本人に代わって折り返しを約束したり、携帯電話の番号を伝えたりはしないでください。
在籍確認とは何か
在籍確認は、ローンやクレジットカードの申込者が、申告した勤務先に本当に勤めているかを、金融機関の側が確かめる連絡です。電話のほか、書類で確認する方法もあります。
誰がかけてくるのか
かけてくるのは貸金業者だけではありません。
- 貸金業者:消費者金融、事業者向けローン会社など。
- 銀行・信用金庫:カードローンや各種ローンの申し込みに伴うもの。
- 信販会社・クレジットカード会社:カードやショッピングクレジットの審査。
- 保証会社:ローンや賃貸契約の保証を引き受ける会社。
- 調査を代行する会社:金融機関から委託を受けて在籍確認を行う会社。
会社名ではなく担当者の個人名だけで名乗ってくることもあります。申込者が周囲に知られないようにするための運用だと説明されますが、受ける側からすると個人名だけでは相手を判断できません。社名を尋ねてください。
会社に答える義務はあるのか
貸金業者の側には、貸付けの前に返済能力を調べることが求められています。金融庁は「貸金業者向けの総合的な監督指針」で次のように示しています。
貸金業者は、過剰貸付けの抑制のために導入された、個人顧客の年収等から算定される当該個人顧客に係る基準額を超える貸付け等を原則禁止する総量規制(本監督指針において「総量規制」という。)を遵守することをはじめ、貸付けの契約を締結するに当たっては、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力を十分に調査する義務があり、調査の結果、その顧客等の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。
(出典:貸金業者向けの総合的な監督指針 II-2-13 過剰貸付けの禁止|金融庁)
ただし、ここから2つのことは言えません。
- 電話での在籍確認が法令で義務づけられているわけではありません:この監督指針のうち貸金業者の監督にあたっての評価項目(II)には、在籍確認・電話確認という語が出てきません。調査すべき対象は返済能力です。
- 勤務先の側に回答する義務が生じるとは、これらの資料からは確認できません:「相手が調査しなければならないのだから、こちらも答えなければならない」とは考えなくて構いません。
なお同じ監督指針は、貸金業者が受け取る年収証明書の例として「当該個人顧客の勤務先が発行する所得証明書」を挙げています(II-2-13-1)。電話とは別に、従業員から書類の発行を頼まれることはあります。
申し込む側で、これから在籍確認を受ける立場の方は次の記事をご覧ください。
カードローンの審査に通る方法やポイント!不安なときの対処法って?
消費者金融の申し込みに必要な書類は?提出の際の注意点も解説!
会社としてどこまで答えてよいか
以下は、発信元を確認できた後に、社内規程に従ってどこまで回答するかを判断する場面です。確認前にその場で答えてよい、という意味ではありません。
従業員の情報を社外に伝えてよいかどうかは、個人情報保護法の枠内で、会社ごとの個人情報取扱規程が定めています。電話を受けた人が独断で判断する場面ではありません。
答える範囲は、おおむね次の3段階に分かれます。どれを取るかは会社の方針次第です。
- いっさい回答しない:在籍の有無も含めて答えず、本人経由での確認を求めます。
- 在籍の有無だけ答える:「在籍しています」までにとどめ、それ以外は答えません。
- 在籍と所属部署まで答える:どこまで回答するかは、自社の規程に従います。
在籍確認への対応として、役職・勤続年数・給与・住所・携帯番号などまで回答する必要があるとは、今回確認した公的資料からは確認できません。こうした情報を聞かれても、その場で回答せず自社の規程に従ってください。
社内に規程がないとき
対応方針が定められていない会社もあります。その場合は「答えない・折り返す」を既定にしてください。
- 電話を受けた人が判断しない:受付や総務の誰が出ても同じ返答になるよう、断り方を決めます。
- 判断する人を決めておく:人事責任者、いなければ管理職など、誰が判断するかを先に決めます。
- あとから規程に追記する:一次窓口と回答可能な範囲を決めておけば、次回から迷いません。
在籍情報と個人情報保護法
個人情報保護法で第三者提供が制限されるのは、「個人情報」のうち「個人データ」に当たるものです。個人情報保護委員会は健康保険組合向けの事例集で、通常検索できる状態にあるレセプトや加入者資格は個人データに当たることが多い一方、電話で「Aさんはいらっしゃいますか」と聞かれたときにAさんが在室中かどうかは個人情報ではあっても個人データではないため、本人の同意を得ずに回答して構わない、と説明しています。
そのうえで、この事例集の扱いには2つの限界があります。
- 設問そのものが警察からの照会です:もとの問いは刑事訴訟法第197条第2項に基づく照会についてのもので、回答の本体は「法令に基づく場合」にあたるため同意なしで応じてよい、というものです。貸金業者からの電話に、この例外は当てはまりません。
- 健康保険組合の設例です:一般企業が貸金業者から受ける在籍確認について、同じ結論になると示したものではありません。
(出典:「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を補完する事例集(Q&A)問319|個人情報保護委員会)
ここから先は当サイトの当てはめで、公表された公式見解ではありません。会社が従業員名簿などを検索できる状態で管理している場合、その情報が「個人データ」に当たる可能性があります。その場に居るかどうかを答えるのと、在籍しているかどうかを答えるのとでは、扱いが変わる場合があります。
退職者については、個人情報保護委員会が直接答えています。
退職した従業者に関する在籍状況や勤務状況等が個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)になっている場合、問合せに答えることは個人データの第三者提供に該当し、本人の同意がある場合や第三者提供制限の例外事由に該当する場合を除いて、第三者に提供することはできません。
(出典:(第三者提供の制限の原則)Q7-12|個人情報保護委員会)
自社のケースがどちらに当たるかは、社内の個人情報取扱規程と、法務や人事の担当部署で確認してください。
発信元を確認する
相手が電話で伝えてきた番号にかけ直さないでください。名乗られた番号ではなく、こちらで調べた番号を使います。相手が貸金業者を名乗ったかどうかで、調べ方が変わります。
貸金業者を名乗った場合
日本貸金業協会の「協会員検索」で調べられます。都道府県のボタンから探す方法と、条件を入れて探す方法があります。条件で探す場合の入力欄は次のとおりです。
| 電話番号 | 着信に表示された番号から引けます。「03-1234-5678」のようにハイフンを入れた形式で、半角です。 |
|---|---|
| 商号・名称 | 正式名称のほか、カタカナ読みでも引けます。どちらもあいまい検索に対応しています。 |
| 本店住所 | あいまい検索に対応しています。 |
| 登録地域・登録番号 | 登録地域を選び、登録番号の数字部分を半角で入れます。「◯◯財務局長(◯)第◯◯◯◯◯号」の表記をそのまま打ち込む欄ではありません。なお登録地域の選択肢は都道府県のみで、財務局はありません。 |
| 協会員番号 | 分かっていれば使えます。半角です。 |
(出典:協会員検索|日本貸金業協会)
見つからなくても、それだけで怪しいとは判断できません。次の場合は、正規の相手でもヒットしません。
- 協会に加入していない貸金業者だった:検索の対象は協会員に限られます。
- 登録されている番号と、発信に使った番号が違う:コールセンターや発信専用の番号が使われている場合、届出の番号と一致しないことがあります。
- 支店からかけてきた:都道府県から探す場合、その都道府県に本店がある協会員しか表示されません。
協会に入っていない貸金業者でも、登録そのものは金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で確認できます(金融庁)。見つかった場合は、表示された内容が相手の名乗った社名や所在地と合っているかを見ます。
それ以外の会社を名乗った場合
銀行・信用金庫は貸金業者に当たらないため、どちらの検索にも出てきません。信販会社・クレジットカード会社・保証会社は、キャッシングなどのために貸金業登録をしている場合があり、ヒットすることもしないこともあります。代行会社も同様です。
いずれの場合も、確認の手順は共通です。
- 会社名を検索して公式サイトを開く:検索結果の広告枠ではなく、公式サイトであることを確かめます。
- 公式サイトに載っている番号にかける:代行会社を名乗られたときは、委託元の金融機関を聞き取り、その金融機関に確認します。
- 在籍確認の連絡があったかを尋ねる:顧客のことは答えられない、と言われることもあります。その場合でも、こちらから情報を出さないという結論は変わりません。
「そのような連絡はしていない」と言われたときは、名をかたった電話の可能性があります。ただし、委託先からの発信を窓口が把握していない場合もあるため、その場で断定はしません。自社が情報を出していないかを確かめて、社内に共有します。
詐欺の電話と見分ける
在籍確認を装って従業員の情報を聞き出そうとする電話も考えられます。次のような場合は、情報を出さずに切ってください。
- 社名を名乗らない:個人名だけで、社名を聞いても答えない。
- 番号を明かさない:折り返し先を教えない、非通知でかけてくる。
- 急かす:「今すぐ答えてほしい」と確認の時間を与えない。
- 在籍以外を聞いてくる:在籍の確認に必要のない事項を尋ねてくる。
判断がつかないときの相談先
社内で決められないときは、次の窓口で相談できます。控えておいた社名・担当者名・登録番号・着信番号を手元に置いてかけると、話が早く進みます。
| 相手が登録業者か分からない | 貸金業相談・紛争解決センター(日本貸金業協会)0570-051-051/9:00~17:00(土・日・祝休日・年末年始休業日を除く)。「登録業者かどうか確認したい」といった相談を受け付けています。資金需要者等に向けた窓口として案内されています。 |
|---|---|
| 詐欺の疑いがある | 警察庁は、生活の安全に関わる悩みごと・困りごとなど、緊急でない相談の窓口として「#9110」番を案内しています(警察庁)。 |
| 個人情報保護法の考え方を確認したい | 個人情報保護法相談ダイヤル(個人情報保護委員会)03-6457-9849/9:30~17:30(土日祝日及び年末年始を除く)。同ダイヤルは、個別の事案について適法・違法の判断を求める相談には応じないとしています。制度や法の一般的な考え方を尋ねる形で使ってください。 |
協会員検索で見つからない=違法な業者、ではありません。
本人が不在・退職・該当する社員がいない場合
本人が席を外している、外出している、休んでいる。こうしたときも扱いは同じです。「本日は不在です」という返答も、その人が在籍していることを伝えたことになります。
すでに退職している場合は、前掲のQ7-12がそのまま当てはまる場面です。退職者の在籍状況が個人データになっている場合、答えることは第三者提供にあたります。「退職しました」も情報です。
そんな社員はいない場合も、「おりません」とは答えません。なりすましや情報収集が目的の電話であれば、「そういう社員はいない」という返答自体が、社員名簿を探るための手がかりになります。
まとめ
- その場で答えない:社名・担当者名・用件・着信番号を控えます。
- 発信元を確認する:貸金業者なら協会員検索や金融庁、それ以外なら公式サイトから確認します。
- 社内規程に従って回答する:電話を受けた担当者が独断で在籍情報を伝えないことが基本です。
急かされても、確認してから答えてください。